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2013/04/19 コラム
第13回 海外に目を向けろ!!(2)
ほんの2週間前はコートを持たずに外出することなど考えられなかったが、ここ1週間ほどで朝晩の冷え込みがぐっと和らいできた。
musica labに入社してもうすぐ1年、スポーツと縁遠かった私が、入社以来、頻繁にスポーツ観戦の機会を持つようになった。テレビで観るスポーツと実際に会場に足を運んで観るスポーツはまったく違う。会場内のどよめきや歓声を肌で感じ取ることができ、選手やファンの方々と同じ場所で、同じ空気を感じることができるのだ。大きな声を出して応援すると、スカッとした気分になれるのも良い。
せっかく暖かくなったこの時期、できるだけスポーツ観戦に出かけたいと思う。
■海外にチャレンジするスポーツ選手の諸手続き
チャンスを求め海外にチャレンジするスポーツ選手のために、前回のコラムに引き続き、スポーツ選手が日本を出国する際の日本国内での諸手続きについて説明したい。
■住民税の支払いは出国日までに済ませよう
住民税は1月1日時点で住民票登録のある市区町村が課税権を持っているため、基本的に住民票のある市区町村に支払うこととなる。とはいえ・・・、これは余談であるが、住民票のある市区町村と実際に住んでいる市区町村が異なるケースはよくあり、課税権を巡って市区町村同士がモメる?事態がよく起こっている。異なる市区町村に引っ越した人は、できるだけ早く、遅くとも年内には住民票を移し、実際の居住地と一致させておこう。
(堅苦しいことを言えば、転居から14日以内に住民票を移さなければ、5万円以下の罰金の可能性あり・・・住民基本台帳法第22条・第53条)
住民税の課税システムは、前年(2012年)の所得をもとに、当年(2013年)の税額が確定し、当年(2013年)の6月末、8月末、10月末、翌年1月末の4回に分けて支払うルール(普通徴収)となっている。スポーツ選手が年の途中で日本を出国することになった場合、「残っている住民税の支払いなんざぁ知らん!」といって出国してしまうことが考えられるが・・・、これはまずい。出国時には今年の住民税の納税を済ませておこう。
■固定資産税、都市計画税はどうなるのか?
固定資産税も住民税と同じく、1月1日時点で日本国内に土地や建物を所有している人に課税され、所有物件が存在する市区町村に納税する。固定資産税は住民税とは異なり、たとえ1月1日時点にスポーツ選手本人が日本国内に住んでいない場合でも、日本国内に不動産を所有している以上、課税される。もし家族全員で海外に出国する場合は、前回コラムでご紹介した「納税管理人の届出」を市区町村にも提出しておき、信頼できる人に納税してもらおう。
■最も気になる年金は・・・?
年金の制度については、これは厚生年金(サラリーマンが加入する年金)であろうが、国民年金(個人事業主が加入する年金)であろうが、いずれも原則25年以上加入して日本に年金保険料を納めなければ、将来、年金を受け取るための受給資格が得られない。
このため、海外で暮らすスポーツ選手の中には、日本を離れてもなお、年金保険料を支払い続ける人がいる。さらに滞在国の年金制度にも加入し、日本と海外との両方の国で年金保険料を二重払いしているケースも多々、見受けられる。
スポーツ選手が滞在国で支払う年金保険料は、加入期間が短いため、将来年金として受け取れる可能性は極めて低い。つまり、海外で支払う年金保険料は「貯金」ではなく「掛け捨て」となってしまうのである。
これを是正するため、現在、日本はアメリカやドイツ、韓国、イギリスやフランス等で二国間社会保障協定を締結し、年金保険料の二重払い防止に努めている。その内容は、二国間協定のため、どの国の協定も同じ内容ではないが、おおむね下記の2つの条文が盛り込まれている。
①適用調整
相手国への派遣の期間が5年を超えない見込みの場合には、当該期間中は相手国の法令の適用を免除し自国の法令のみを適用し、5年を超える見込みの場合には、相手国の法令のみを適用する。
②保険期間の通算
両国間の年金制度への加入期間を通算して、年金を受給するために最低必要とされる期間以上であれば、それぞれの国の制度への加入期間に応じた年金がそれぞれの国の制度から受けられるようにする。
(厚生労働省HPより)
つまり、社会保障協定のある国に5年以内で滞在する予定の場合、日本に年金保険料を支払い、5年を超えると滞在国の年金制度に加入することになる。そして、保険期間の通算とは、例えば日本で19年、滞在国で9年と、年金受給資格を満たさないものの、両方をプラスすれば条件を満たすこととなり、両国から相応の年金を受け取ることができるという意味である。
■最後に、健康保険は?
スポーツ選手にとって海外で考えられる最大の恐怖は、病気やケガである。滞在国に医療保険制度があり、なおかつその医療制度に強制的に加入させられる場合は、病気やケガをした場合、その国の医療保険を使うことになる。
反対に、日本の国民健康保険に加入したままの状態で海外に滞在し、そこで医療行為を受けた場合は、いったん医療費の全額を本人が立て替え、その後、日本で保険治療の対象となる医療行為のみに対してキャッシュバックがあると考えよう。なお、重要なポイントとして、住民票を日本に残しておく必要があるので、注意されたい。併せて、民間の海外旅行傷害保険に加入しおくとなお安心である。
・木村 仁美
・1970年10月1日生 大阪生まれ B型
・15年間税理士法人での勤務経験あり
・スポーツ業界は完全な素人&運動音痴
[趣味]
ハイキングと昼寝
[目標]
自分の経験を生かし、スポーツ業界で働くみなさんのお役に立つこと
台湾の阿里山に登ること