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2013/05/03 コラム

第14回 スポーツチームの付加価値とは?

 

■本当に喜ばしいニュースなのか?

富士山が世界文化遺産に登録されるという、嬉しいような、困ったようなニュースが飛び込んできた。スポーツ音痴を自認している私ではあるが、これまで富士山には1998年と2010年の2度、登った経験がある。

 

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■1度目と2度目の違い

初めての富士登山と2度目のそれとの間には、12年のタイムラグがあったのだが、その感想はひとことで言うと「以前とまったく違う山」であった。1度目に登った1998年当時は、まだまだ登山道も完全には整備されておらず、デコボコの登山道でケガをしないよう、足元をしっかり見ながら気を付けて歩いていたように思う。八合目の山小屋で仮眠する際には、見ず知らずの隣の人とピッタリくっついて寝るスタイルで、まるで自分がスーパーで売られているタラコにでもなったように感じたことをよく覚えている。とはいえ、自然の中に入ること=不便さを楽しむことと考えれば、それもまた楽しい思い出であった。

 

2010年に再び富士登山にチャレンジした時には、空前の「山ガール」ブームとあって、多くのオシャレな女性が山頂を目指していた。女性をターゲットにしていたかどうかは不明であるが、登山道は非常によく整備され、すし詰めで眠った山小屋は、山ホテルと言っても遜色ないほどにグレードアップしていた。おまけにトイレが驚くほどキレイになっていた!!歩きやすく、泊まりやすい、実に快適な山行であった。

 

 

 

■登山人口増加とそれについて行けない環境

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ただ、2度目の登山は道が整備され過ぎて、あまり面白いコースとは感じられず、何より、登山客のあまりの多さに辟易した。時間帯にもよるが、登山道はあちらこちらで渋滞していて、時に危険を感じるほどであった。富士山が世界文化遺産に登録されれば、ますますハイカーは増加するであろう。トイレの汚物処理問題、ゴミ問題等、高地という特殊な環境下にある富士山に、多大な負荷がかかるのではないか・・・、不安を覚えずにはいられない。

 

だが、世界文化遺産という名誉な「付加価値」を手に入れた暁には、今年の登山人口はさらにアップするであろう。いったいどれくらいの人が押しかけるのか、興味半分、不安半分、といったところである。

 

 

■スポーツチームの付加価値とは?

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ところで、スポーツチームの付加価値とはいったい何であろうか?Wikipediaで付加価値という言葉の意味を調べてみたところ、「経済における価値とは財の価格のことだが、生産活動によって生産された商品の価格が原材料等の価格より高くなるのは、生産によって価値が生み出され、付加されたからとする考え方に由来する。」となっている。つまり、試合のチケットは、実際に行ったことのないうちは何の価値もない、ただの紙切れに過ぎないが、チームや選手が面白いゲームを観客に見せ、会場内で楽しい時間を提供することができ、なおかつ感動させることができれば、次の試合のチケットは最初の一枚とはまったく違う意味を持った価値あるものとなる。

 

 

■チームの強い弱いと、観客動員数は連動しない?

先日、下部リーグ落ちしたスポーツチームの試合を観に行ったが、入場者数16,803人と、下部リーグの平均観客動員数を1万人も上回っているではないか。さすが人気チームだけはある。下部リーグに落ちるくらいであるから、最近は特に弱いはずなのに・・・、なぜこれほど観客動員数をキープできているのであろうか?

 

一般的に、弱いチームの観客動員数は落ち込み、逆に強いチームの観客動員数は増加すると思われがちであるが、この人気チームについては、その考えを見事に覆している。それどころか、下部リーグに落ちたそのチームのおかげで、対戦相手の観客動員数が増加しているそうである。

 

 

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■観客一体感 (付加価値その1)

これにはちゃんと理由がある。いわゆる常連さん(コアファン)がたくさんついている証拠なのである。その試合会場に足を運べば楽しい時間を持つことができる。街で会えばまるっきり他人のはずのファン同士が、そこに集まれば声を枯らして一緒に応援する、「観客一体感」をすでに知っているのである。試合開始は16:00からにもかかわらず、2時間も前から会場入りし、試合開始までのワクワク感や興奮した雰囲気をコアファン同志で共有するのである。

 

■試合前の飲食、グッズ購入を楽しむ(付加価値その2)

さらに、会場内での滞在時間が長くなればなるほど、コアファンは飲食やグッズ購入でお金を落としてくれる。同じ場所で、同じ色のユニフォームを身に着け、同じ物を食べる時間。チーム運営者としての知恵の絞りどころは、この、試合前の時間帯にいかに付加価値をつけたサービスを提供できるかにかかっているように思う。

 

■日本代表選手など、魅力ある選手の存在(付加価値その3)

もちろん試合が始まれば、日本代表などの有力選手をじっくり見ることができる。

下部リーグに落ちたとしても、大好きな選手が所属している限り、その選手めがけてコアファンは試合に訪れるのである。

■一度、試合会場に来てみればわかる

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たった一度、来場者の頭の中に「楽しさや興奮(付加価値)」をインプットしてもらうことに成功すれば、その来場者はただの来場者からコアファンに変貌してくれるに違いない。

そのうち、コアファンそのものが優秀なチームの営業マンとなり、チームの付加価値となるはずである。

 

■観客動員数UPを目指して

富士山には今後、世界文化遺産という付加価値がつく。これまでは日本一標高の高い、美しい単独峰であったかもしれない。だが世界文化遺産という付加価値を得ることにより、たった2ケ月間の登山シーズンに、さらに多くの登山者が山頂を目指すことであろう。

 

スポーツチームの付加価値とは何か?その付加価値を高めることは、決して簡単な事ではないが見出す事で富士山のようになるのかも知れない。

 

 

 

 

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・木村 仁美
・1970年10月1日生 大阪生まれ B型
・15年間税理士法人での勤務経験あり
・スポーツ業界は完全な素人&運動音痴
[趣味]
ハイキングと昼寝
[目標]
自分の経験を生かし、スポーツ業界で働くみなさんのお役に立つこと
台湾の阿里山に登ること