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2014/01/31 コラム
第32回 フィギュア小塚崇彦や伊藤みどりを育てた愛知県!その強さの秘密とは?
■愛知県の位置と周辺環境
今回のスポーツマネイジメントコラムは、日本列島のほぼ中心に位置する愛知県を取り上げたい。今やフィギュアスケートの一大聖地といっても過言ではないくらい、有力選手や将来のオリンピック選手が集中する愛知県。
基本的には私立大学がフィギュアスケート専用のリンクを所有することにより、優秀な指導者や選手が集まる仕組みができ上がっているのだが、果たして自治体の立場からのオリンピック選手育成やプロスポーツに対する関わり方はどうなっているのか調べてみた。
愛知県といえば、熱田神宮、トヨタ自動車、喫茶店のメニューとして有名な、餡子の乗ったトーストを思い出す。他にもパチンコ発祥の地であるとか、金のシャチホコと徳川家、おひつまぶし等々、次から次へと思い浮かぶ。歴史や文化が豊かで、都市部特有の「楽しむ」選択肢の多さを感じ取ることができる。
愛知県は太平洋側に面した土地のため、夏は高温多湿で蒸し暑く、冬は乾燥した晴天の日が多い。時に岐阜県関ヶ原方面から「伊吹おろし」という冷たい風が吹き、冬場は局地的な大雪をもたらすことがある。
■愛知県の人口とスポーツの分布
愛知県の人口は約744万人(2013年12月1日現在、愛知県公式HPより)、そのうち15歳未満人口が1,048,776人(14.2%)、15歳以上65歳未満人口が4,673,248人(63.3%)、65歳以上人口が1,657,777人(22.5%)世帯数は2,996,915世帯(2013年11月1日現在、愛知県公式HPより)である。
愛知県の人々が自ら好んで行うスポーツとしては、第1位のウォーキング・軽い体操、第2位の水泳、第3位に器具を使ったトレーニング、第4位はゴルフ、第5位にキャッチボールを含む野球となっていて、箱モノ、つまり全天候型のスポーツ施設がいかに充実しているかが容易に想像できる。
■愛知県に本拠地を置くスポーツチームは多数
愛知県に本拠地を置くスポーツチームは以下の通りである。強豪チーム、有名どころ、どのチームもその競技種目の中では一流のチームといえる。愛知県知事は名古屋グランパスの後援会・名誉会長であり、名古屋オーシャンズの名誉サポーターでもある。
- 中日ドラゴンズ(プロ野球・セントラル・リーグ 名古屋市)
- 名古屋グランパス(サッカー・日本プロサッカーリーグ 名古屋市)
- 名古屋オーシャンズ(フットサル・日本フットサルリーグ 名古屋市)
- 浜松・東三河フェニックス(バスケットボール・bjリーグ 浜松市・愛知県東三河地区)
■大学や企業がオリンピック選手を育て&支える
愛知県には、一流のプロチームが揃っているのだが、アマもすごい。レスリング、そしてフィギュアスケートに関しては、私立大学がオリンピック選手輩出の母体となっているうえ、選手が社会人になってからは、名だたる企業が選手生活をバックアップしているのだ。
中京女子大学レスリング部(現・至学館大学)からは、国民栄誉賞や愛知県スポーツ栄誉大賞を受賞しているレスリングの吉田沙保里選手、そして伊調千春、伊調馨姉妹が輩出されており、そのうち吉田選手と伊調馨選手は、警備会社に所属しながら現在も競技生活を続けている。
そして女子フィギュアスケートでは、中京高校、中京大学が、浅田真央、村上佳菜子選手らを育て、その後はトヨタ自動車といった大手企業に所属する選手も多い。
■競技者から指導者へ~、施設面での充実
来月からソチで開催されるオリンピックに出場する女子フィギュアスケート3選手は全員が愛知県出身である。なぜ、フィギュアスケート=愛知県なのか?それは現役引退した選手が優秀な指導者となってまた選手を育てる、という循環が成り立っているからだと思う。
その昔、小塚崇彦選手の祖父である光彦氏が山田満知子コーチを育て、山田コーチが伊藤みどり選手を育て・・・、という良い循環が、現在の愛知県をフィギュアスケートのお膝元にしたのだ。そこに中京大学の専用リンクという施設面での好条件も加わって、練習が思う存分できる環境となっている。
全国的にスケートリンクの老朽化が問題となり、入場者数の低下によるリンク存続の危機も、愛知県的にはどこ吹く風なのである。
スケートの競技者人口は2005年には日本国全国で約3,000人といわれていたが、2006年トリノオリンピックで荒川静香選手が金メダルを獲得すると、2010年には約4,400人に膨れ上がり、お金がかかることで有名なフィギュアスケートが、今回のソチオリンピックでいずれかの選手がメダルを取ったら、ますます競技人口は増加することだろう。
■愛知県の支援
愛知県とオリンピック選手の関わり方はどうだろうか。いつものように電話取材を依頼したところ、非常に親切に回答はいただけたのだが、愛知県は現在、財政難とのことで・・・、スポーツ振興に関する予算は縮小中とのことであった。
支援のあり方については、前回コラムの長野県と同様、愛知県がオリンピック選手一個人を直接支援するようなことは行っておらず、例えばスケート連盟のような競技団体からの申請あがって初めて、1回の海外遠征につき2万円の補助がなされるとのことであった。(団体に対しては1回10万円の補助があるそうだ。)
金額的には少ないように感じたが、よくよく考えてみると、オリンピック選手ともなると、国の強化選手に指定されるのが普通で、逆に地方自治体は絡みにくいのかもしれない。オリンピック選手個人と県を繋げようと無理やり質問する方が、無茶というものであった。
■東京オリンピック開催が決定して
そんな、一見温度が低いように感じた愛知県への電話取材であったが、東京オリンピック開催が決まって、愛知県自身もザワつき始めている。具体的な対策はこれから話し合われるそうなのだが、6年後にどれくらい有望な選手が愛知県内で育っているか、そしてどんな選手が東京オリンピックに出場するのか、自治体の取り組みいかんで、まったく異なった結果が待ち受けていることだろう。
自治体の予算は、どこも今頃の時期に決定すると思われるが、せめて外国人選手に気後れせずに戦うことができるだけの胆力、精神力、語学力を養うための予算があっても良いのではないか、と感じた。