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2012/11/23 コラム

第3回 あなたは年末調整か?それとも確定申告なのか?

 

毎年11月も半ばになってくると、ブルーな気持ちになっていたものである。前職(税理士法人)では、12月初旬から翌年の5月末までの約半年間が繁忙期に当たっていた。年末調整、法定調書&償却資産申告書の提出、12月決算法人の税務申告(税務署への申告期限は2ケ月後である)、個人確定申告、3月決算法人の税務申告・・・と、ボリュームある作業が次から次へと待ち受けていて、カレンダーの関係で、年末年始やGWの連休が長くなればなるほど、自分の首が締まるという素敵なシステムになっていた。

 

社内では担当クライアントが厳密に分かれていたので、同僚の仕事を手伝ったり、逆に手伝ってもらったりすることも難しかった。運悪く風邪を引いてしまうと、周囲から迷惑顔で同情はしてもらえても、代わりに誰かが仕事を進めてくれるはずもなく・・・、ゼイゼイ言いながら仕事をやっつけたものである。

 

今年からはそのプレッシャーから解放される!と喜んでいたのも束の間、この会計コラム連載がスタートし、締切に追われる漫画家の気分とはこういうものなのか???と自問自答しながら、不思議な感覚を体験させてもらっている。今回は年末調整と確定申告の違いについて、スポーツ業界で働くみなさんと、スポーツ選手に向けて解説してみたい。あなたはどちらのタイプなのか?

 

サラリーマン(給与所得者)で、ご自身の給与明細をじっくりと見たことのある人はいるであろうか。ほとんどの人が、税金の控除欄に「所得税」「住民税」と書かれて、いくばくかの金額が天引きされていると思う。「所得税」は日本国に納める税金、「住民税」は1月1日時点で居住している市区町村に納める税金である。

 

このうち、給料から天引きされている「所得税」は、1月~11月までの期間はドンブリ勘定で多めに天引きされていると思っていただきたい。年末調整とは、この多めに天引きされた「所得税」を、年内最後のお給料(もしくは翌年1月)で取り戻す作業なのである。

 

給料明細

 

面倒な事務作業は会社がやってくれる。年末調整の事務作業は、企業側に課された義務なので「ウチは年末調整とか、やってないから~。確定申告を各自でやってください。」などと言っている総務や経理担当の方はいないと思う。(が・・・、時々そんなことを言っている担当クライアントを見たことはある。)

 

サラリーマンは、生命保険料控除証明書など、必要最小限の書類を会社に提出するだけでOK。ただし、家族構成に変化があった場合や、家族に就職したり離職したりした人が出た場合は、会社にその都度申告しておこう。ごくまれではあるが、年末調整で還付ではなく、追加徴収されてしまう人もいるからだ。ケースとして多いのが、妻がアルバイトに精を出し過ぎて年収103万円を超えてしまったことを知らずにいる旦那さん。そう!そこのアナタなのだ。扶養家族をひとり多い状態で1年間給与計算されたままになっていると、年末調整時に扶養家族を減らして年税額を確定すると、驚くほど追加徴収されると思った方が良い。自分の家族の稼ぎくらいは把握しておこう。

 

は、話がそれてしまった・・・。次は確定申告の話。これは大半のスポーツ選手に該当すると思われる。スポーツ選手の多くは、一般的なサラリーマンの「雇用契約」とは異なり、特定のチームと、一個人事業主として「請負契約」を交わしている。雇用契約と請負契約の大きな違いはズバリ「ケガと弁当は自分持ち」の考え方があるかないか、である。

 

雇用契約が規定時間内の労働力提供の見返りに給料が支払われるのに対し、請負契約は仕事の完了をもって初めて報酬が支払われるため、万が一、ケガや病気で試合に出られない場合は、収入を得ることができない。社会保険などの保障もないため、まさに「ケガと弁当は自分持ち」雇用契約に比べ不安定な契約であることは否定できない。その代わり、誰の指揮監督命令下に入ることもなく、所属チームからの拘束時間も最小限ですむ。そして何より、己の実力次第でサラリーマンでは考えられないくらいの金額を手にできる可能性がある。

 

では確定申告の方法とはどのようなものか?まず、収入の種類を分類する。スポーツ選手としての競技活動収入(事業所得もしくは給与所得)、TV出演・講演会活動・本の執筆活動によって得られる収入(雑所得)、家賃収入(不動産所得)、株式の売買や配当収入(株式等の譲渡所得・配当所得)等々・・・。そして、これらの収入にヒモ付けできる必要経費も分類して収入からマイナスし、収入の種類ごとに「儲け」をはじき出す。

 

1年間の収入(それぞれの収入ごとに分類)- 1年間の必要経費 = 儲け(所得金額)

 

03_02

 

ポイントとしては、1/1~12/31まで買い物した領収証をとにかく集めておく。領収証の出ない電車・バスなどの公共交通機関の必要経費もバカにできないので、必ずメモしておいて必要経費に入れる。クレジットカードでの支払明細は一枚一枚、残しておく。TV出演のための美容院代や衣装代も必要経費に入れてもおそらく問題ないであろう。ただし、プライベートで使った晩御飯のおかずや日用雑貨を必要経費に入れると、十中八九、税務調査で否認されるので注意したい。あくまでも仕事で使った費用のみを必要経費にしよう。

 

確定申告時期は毎年2/16~3/15であるが、野球選手にとっては春季キャンプの開始時期、サッカー選手にとっては開幕直前の時期に当たる。自分の年間収支を確定させる面倒な確定申告と、シーズン前の大切な時期がぶつかるので、多少の費用を支払ってでも、税理士に相談されることをお勧めしたい。スポーツチームの担当者は、選手個人から確定申告について質問されることはないであろうか?その際、どのように対応されているであろうか?

 

良い税理士は、クライアントの話をよく聞いて、生活環境や家族関係まで把握したうえで、節税の方向性を提案してくれるであろう。郵便のやり取りだけで対応する税理士や、送られてきた資料「だけ」で申告書を作成して、質問すらしてこない税理士は・・・、敬遠すべきであろう。税理士のおトモダチはたくさん知っているので、お困りの場合はmusica labにご相談いただきたい。・・・、最後まで話がそれたらしい。

 

 

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・木村 仁美
・1970年10月1日生 大阪生まれ B型
・15年間税理士法人での勤務経験あり
・スポーツ業界は完全な素人&運動音痴
[趣味]
ハイキングと昼寝
[目標]
自分の経験を生かし、スポーツ業界で働くみなさんのお役に立つこと
台湾の阿里山に登ること