「スポーツを通じて 『快の笑い』を創出したい」株式会社SEA Global 水谷尚人

2017.08.04

「スポーツを通じて 『快の笑い』を創出したい」株式会社SEA Global 水谷尚人の写真

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「スポーツを通じて 『快の笑い』を創出したい」
株式会社SEA Global 代表取締役兼CEO 水谷尚人
リクルート、日本サッカー協会を経て、現在はスポーツマーケティングを支援する会社「株式会社SEA Global」の代表取締役兼CEOを務める水谷さん。事業の一環としてJリーグのアジア戦略のサポートもされています。そんな水谷さんに会社の事業内容やアジア展開の話、スポーツビジネスにかける思いなどについて伺いました。

 

 

――いまスポーツビジネスに関する会社を経営されています。ご自身もスポーツを?

小学3年からサッカーを始め、大学は早稲田大学に進学し、卒業後の1989年にリクルートに入りました。サッカーは大学まで続けていましたが、就職はスポーツとは関係ありません。販売促進部に配属になり、仕事内容は主に雑誌関係の流通の営業でした。その後、やはりサッカーに関わる仕事がしたいと思い、Jリーグが発足した1992年、ぜひそのJリーグで仕事をしたいと面接をしていただいたのです。仕事への自信もあったので絶対採用されるものと考え、既にリクルートへは辞表を出していたのですが、残念ながら不合格。意気消沈していたところ、たまたま日本サッカー協会が拾ってくれることになり、結果としてサッカーに関わる転職ができたのはラッキーでした。
93年はいわゆるドーハの悲劇の年で、日本でサッカーの人気が急上昇していた時期と重なります。サッカー人気が急速に高まっていたただ中で、日本代表チームの試合の運営に関われたのはよい経験でした。

 

 

――サッカー協会では具体的にどのようなお仕事を?

協会には計10年在職し、1996年からの6年間はJAWOC(2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会)へ出向していたんです。私はチケッティングを担当していました。よく知られているように、日韓共同開催の2002 FIFAワールドカップではチケットのトラブルが続出したんです。FIFA指定のチケットエージェンシーが販売を一元管理することになったこともあり、チケットが試合直前まで到着しなかったり、空席が発生したりといった多くの問題が発生しました。

最終的にはチケットエージェンシーの責任問題に発展したのですが、チケッティングに関するFIFA本部での会議(Ticketing Sub-committee)では、私自身の立場について思うところもありました。それは日本サイドのスタッフとしての私とチケットエージェンシーの置かれている環境、立場の違いです。まず日本の組織委員会で働く多くは出向者で、私も含めて毎月決められた日に給料が出向元から支給される立場で働いていました。よってFIFA本部の会議で、チケット管理などの交渉で負けても給料は支払われる環境にいました。

一方、チケットエージェンシーの彼らは全てが自身の生活に直結する立場にあったと思われます。具体的には、自らが取り組み構築しているチケッティングのプランがFIFA本部での会議で否決されると、すべてを失い、一族が路頭に迷うリスクを負っていました。だから必死に交渉に挑んでくるわけです。交渉を有利に進めるためであれば手段を選ばない、そんな覚悟を感じました。日本サイドにいる自分は、今の環境に甘んじている限り、交渉で彼らに勝つことはできないと思っちゃったんです。

そんな自分の立場に思うところがあり、JAWOCの出向後は日本サッカー協会に戻らずに退職することにしました。そして株式会社スポーツエンターテイメントアソシエイツという会社の立ち上げに参画したのち、2003年7月、株式会社SEA Globalを設立して 代表取締役CEOに就任したのです。

 

 

――SEA Globalとはどのような会社ですか?

ひと言でいうと、スポーツマーケティングを支援する会社です。が、スポーツに関わること何にでも積極的に取り組んでいます。具体的には、競技団体やスポーツチームを対象とした企画・運営・コンサルティング ・広報PR支援、高校球児向けフリーマガジンTimely!の発行をはじめとしたメディア事業、幼児運動教室TerraKidsやチアリーディングスクールの運営などです。2012年からJリーグのアジア戦略のお手伝いをするようになり、サッカークラブのアジア進出支援などに力を入れています。

 

 

――Jリーグは最近アジア展開に力を入れています。御社としてはどのような支援を?

いまJリーグはASEAN各国のサッカーリーグと提携し、Jリーグが培ってきたノウハウを活かしてアジアのサッカー界を発展させる土壌づくりを進めています。大きな目的は、ASEAN各国のサッカーが発展、強化されれば、日本サッカーも発展、強化されるというものですが、そこで日本サッカー、Jリーグの魅力が増し、価値の向上がなされれば、JリーグがASEAN各国で放送され、いろいろな機会が創出されます。アジアのサッカーマーケットの拡大に貢献し、Jリーグのスポンサー価値を向上させるのも狙いです。その成果の一つとして二〇一三年、コンサドーレ札幌がベトナムのスター選手を獲得しました。

日本のチームが海外のトップ選手を受け入れると、その選手の自国でJリーグの注目度が高まります。今後、選手の自国においていかにしてJリーグの価値向上につなげるかが問われています。

では当社の役割は何かといえば、ASEAN各国リーグとJリーグが提携関係になってきていますが、この活動を継続し、深化させるために、いかにビジネスとして発展させるか、だと考えています。たとえば、ASEANのスター選手をJクラブが獲得すれば日本と現地のメディアが興味を持ち、イベントなどが活性化し、スポンサー価値が上がります。そうしたビジネスモデルをつくり上げるための準備をしています。これまでにないビジネスモデルも考えねばと検討しているところです。

 

 

――パラグアイのサッカークラブの運営もされているようですね?

湘南ベルマーレとの関係で、日系パラグアイの人と知り合いました。そのご縁でサッカーチームをつくろうという話になったんです。株式会社サクラ・グループ(パラグアイ)との共同出資により、パラグアイ・イタグア市にCLUB NIKKEI BELLMARE(社団法人日系ベルマーレ)を設立。2007年、パラグアイ地方2部リーグでスタートしました。このチームでトップ選手を育成し、トップチームへ移籍させるというような人材育成のビジネスモデルを模索しています。

 

 

――では最後に今後の展望をお聞かせください。

私たちのビジョンは、スポーツを通じて「快の笑い」を創出することです。「快の笑い」とは、生まれて間もない赤ちゃんが、母乳を飲んで満足したときにこぼれる笑顔のことです。スポーツをしている人、観ている人が見せる喚起の笑顔も「快の笑い」だと思っています。赤ちゃんの見せる無心の笑顔と同じ、心を解き放つ大笑いができる体験を、スポーツを通じて今後も提供していきたいですね。

当社には教育事業に関心のあるスタッフが集まっています。「人をつくる」というとおこがましいですが、日本を含めたアジア、パラグアイでスポーツを通じた人材育成、交流の場を提供していく考えです。

また私たちは「スポーツの社会での地位向上に寄与したい」というテーマを持っています。アスリートとして、その道を極めた人が、もっときちんと評価されるべきと考えています。そんな環境作りに努めていきたいです。その為には、スポーツサイドもただそのスポーツに取り組むだけでなく、人としてしっかりとしなければと思います。そういうアスリートは、セカンドキャリアも拓かれていると感じます。そんなサポートもしていきたいと考えています。

私自身は人とのご縁に支えられ、ここまでやってこられたと実感しています。2013年で丸10年、SEA Globalを続けてこられたのは、優秀な仲間に支えられているからこそです。そのことに感謝し、今後もスポーツ界の発展に貢献できるような活動が展開できればと思います。

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