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2013/07/12 コラム

第19回 子どもと地域スポーツの関わり(2)

■地域スポーツと民間企業のスポーツ塾

 ここ10年ほどで、少年野球や少年サッカーのような「地域スポーツ」の役割が一変していることが判明した。前回コラムの最後で「次は民間企業が経営しているスポーツ塾について書く」と予告しておいて、実際「地域スポーツ」と、民間の「スポーツ塾」との比較をしようと試みたのだが、詳しく調べているうちに地域スポーツとスポーツ塾との間にあったはずの差が、徐々に縮まってきているように思えてきた。

 

 

■小学校・中学校のクラブ活動

私が子どもの頃は、体育系のクラブ活動は非常に盛んで、顧問の先生もかなり熱心だったように思う。サッカーやバスケットボールなど、人気のあるスポーツとなると、ごく普通に30人~50人は部員がいたのではないか。「○○部が△△大会に出場することになりました!!」と誇らしげに校長先生が朝礼でおっしゃっていたのを覚えている。

ところがここ数年は、小学校や中学校で行われる放課後のクラブ活動が衰退しているらしいのだ。小学生や中学生くらいの子どもがいる家庭でもない限り、その事実を知らない人は多いと思う・・・。

 

 

■教育の現場で何が起こっているのか?

サッカーゴール 

ためしに「小学校 中学校 クラブ活動 衰退」でネット検索してみると、某教育委員会や市議会で「小、中学校のクラブ活動が衰退し、歯止めがかからない。」といった危機的な発言が議事録となって残っているではないか。平成7年には、ある関西地方の市議会で、当時の教育委員長が「外部指導者派遣事業(外部から優秀な監督、コーチを探してくること)を積極的に進めたい。」と発言している。つまり、教師が放課後のクラブから遠ざかっていることを暗に認めているのである。実際に平成14年度では、某市全体の廃部の数は小学校で131部、中学校で23部にものぼっていた。

確かに、教育実習で出身中学に行かせてもらった時に、教師の仕事って、なんて大変なんだろう!!と強烈に思ったことがある。教師としての業務の多さや、安全管理面等、放課後や休日のクラブ活動に関わる責任は、ボランティアで引き受けるには、相当の勇気と覚悟がいることなのだ。自分達の小、中学時代の先生方は、ボランティアで生徒たちに付き合ってくださっていたのだと、今となっては改めて感謝する以外にない。

 

 

■地域スポーツだけが変わってきたのか?

学校

 学校の教育現場から放課後のクラブ活動が鳴りを潜めるなか、地域スポーツの役割が重要になってきた。例えば、近くに住んでいるらしい?お兄さんが、子どもが興味を持っているスポーツを教えてくれる会が近所にあれば、そこに入会したくなると思うはずだ。そして、そのお兄さんがかなりコーチとして評判が良ければ、少々遠くても子ども達はそのコーチのもとで練習して、自分もうまくなりたいと考えるであろう。

 こうして、スポーツクラブが小・中学校のクラブ活動に取って代わり、活発に活動しはじめている。そして最近では、その会に入会すれば自分の好きなスポーツ競技を選んで、自分の選んだクラスに通えば良いような、多種競技の教室を持つ総合型地域スポーツクラブも誕生している。

 

 

■民間企業が運営するスポーツクラブ(スポーツ塾)

 

一方、民間企業が運営するスポーツクラブといえば、水泳教室がイメージしやすいであろう。さらに、サッカーを例にあげると、九州や関東地方で、チーム自らがプロの卵を養成するU-15、U-18、を持ち、その下に、実力に関係なく一般の子どもでも入会できるサッカースクールが生まれている。チームの実力や成り立ちに大きな差はあれど、学校のクラブ活動の代りに、「地域スポーツクラブ」と民間企業が経営する「スポーツ塾」が台頭してきているのだ。

 

 

■地域スポーツと民間企業のスポーツ塾、決定的な違いは何か?

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グラフ

 それは収入と支出、お金の問題である。発生母体がもともと学校なのか、民間企業なのかでは、入会金や月会費、年会費に大きな開きがある。ある総合型の地域スポーツクラブでは、小学校のグラウンドを使用して(平日は週2回、夕方2時間半・そして毎週末土曜日)活動を行っているが、その地域スポーツクラブでの入会金は、ファミリー会員 10,000円、夫婦会員 8,000円、年会費 大人5,000円、中学生以下 2,500円となっており、年間コストは入会初年度でも、わずが1~2万円である。実際、相当数の会員数を持っているらしく、会員の多さが仇となって、小学校のグラウンドのみでは手狭になり苦しんでいる。

 一方、民間企業のスクールでは、月会費が15,000円するところもあり、年間コストは少なくとも18万円。まさにスポーツの塾なのだ。

 

 

■チーム強化と普及(利益追求)の狭間で

 チーム強化とレベルアップを目指して、入会時にテストを行ったり、月会費を高めに設定するなど、門戸を狭くしているクラブが実際に存在する一方で、身体を動かすことを最大の目的とし、やって来る子どもたちを全て受け入れているクラブもある。どちらを選ぶかは、子どもの選択次第であり、それぞれのクラブが特徴を持って棲み分けしている方が、選択する子ども側にとっては良いのかもしれない。 

 

 

■今後の地域スポーツとスポーツ塾のあり方

 時代の流れとでも言うべきであろうか、「中学時代は部活動でスポーツに関わるもの」と考えられていた時代は終わりを告げた。この10年で地域スポーツのあり方は大きく変わり、地域(昔よりはややエリアの広い地域と捉えていただきたい)のクラブチームとスポーツ塾がそれぞれの特徴を持って、共存しているように感じた。

一定の報酬を支払うのと引き換えに、子どもたちが優秀な指導者を自ら選ぶ。この考え方は将来プロ選手を目指す子どもにとっては正しいであろうし、楽しくスポーツと関わることが主目的である、と感じる子どもの考えも正しい。

いずれにせよ、学校という枠組みを離れ、ビジネスとしてスポーツがひとり立ちし始めているように思えた。

 

 

■今後の運営(経営)の安定に向けてできることとはないか?

体育 

 最後に、困難な資金集めを何とかできないか?「スポーツ=資金難」このイメージをどんなマイナースポーツでも払拭したいのである。例えば、地元でスポンサー企業を探し、収入を得られないか?社会貢献の一環として、地元に何らかの手助けをしたいと思っている企業はゼロではないと思う。そんな企業を探す努力はやってみてもムダにはならないように感じた。

もしくは、スポーツに関するイベントをやろうと決意した時、最近流行りのクラウド・ファンディングは使えないか? ネットを駆使し、多くのスポーツ好きに共感してもらうことができれば、できないことはないはずである。あれこれ考える自分が守銭奴に思えてきた・・・。

 

 

 

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・木村 仁美
・1970年10月1日生 大阪生まれ B型
・15年間税理士法人での勤務経験あり
・スポーツ業界は完全な素人&運動音痴
[趣味]
ハイキングと昼寝
[目標]
自分の経験を生かし、スポーツ業界で働くみなさんのお役に立つこと 台湾の阿里山に登ること