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2014/06/13 コラム

第34回 【大分県】3年で11億の債務超過をV字回復出来た理由とは!

■大分県の位置と周辺環境

今回のスポーツマネイジメントコラムは、初めて九州に視点を移し、大分県について取り上げてみたい。九州の北東部に位置する大分県は、源泉数や湧出量が、ともに日本一を誇る別府温泉で有名である。社団法人ツーリズムおおいたという、県の観光情報公式サイトでは「日本一のおんせん県おおいた」としてトップページに色々な温泉を紹介していて、大分県の人々が温泉を重要な観光資源と認識していることがうかがえる。

 

そしてこれは、すでに10年以上前の話となってしまったが、2002年日韓共催ワールドカップの折、「中津江村」という地名が連日、新聞やニュースを賑わせた。中津江村はカメルーン代表チームの合宿地となったことで一躍脚光を浴びたが、そのカメルーン代表チームはワールドカップ直前にストを起こし(ボーナス問題が発端だったらしい)、日本への到着が5日も遅れたことで話題となった。面白いエピソードのおかげで、このことをご記憶の方も多いのではないだろうか。

 

気候はどうだろう。瀬戸内海側に面した大分県東部は晴天が多く概ね温暖な気候だが、北部は冬になると北西からの季節風の影響を受け、たとえ九州といえども年に数回、雪の日がある。九重山連山や祖母山、傾山があり、平野部が少ないのが特徴である。

 

 

■大分県の人口とスポーツの分布

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大分県の人口は約118万人(2013年10月1日現在、大分県HPより)、そのうち15歳未満人口が151,543人(12.86%)、15歳以上65歳未満人口が685,516人(58.15%)、65歳以上人口が334,889人(28.41%)世帯数は492,865世帯である。

 

大分県の人々が自ら好んで行うスポーツとしては、第1位のウォーキング・軽い体操、第2位のつり、第3位に水泳、第4位、5位は同率でジョギング・マラソン、器具を使ったトレーニングとなっている。

 

 

■大分県を本拠地とするプロスポーツチーム

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大分県に本拠地を置くプロスポーツチームは次の4チームである。

 

まず大分市に電話をかけ、大分県(大分市)内に本拠地を置く4つのプロスポーツチームに対する支援について質問をしてみた。

 

はじめのうちは「体育館等のスポーツ施設の使用料減免は実施されていますか?」とか「プロスポーツ選手による学校訪問など、競技人口の裾野を広げる活動は行っていらっしゃいますか?」など、他の自治体でもごく普通にやっていそうなことばかり質問していたのだが、詳しく聞き出すうちに、プロスポーツチームをバックアップするシステムが、大分では機能していることが判明した。

 

 

■おおいたホームタウン推進協議会

 

市と県の枠組みを超えた「おおいたホームタウン推進協議会」という組織がそれである。おおいたホームタウン推進協議会の組織図を見ると、会長は大分市長であり特別顧問は大分県知事なのだ。市と県が手を組み、縦割り組織を排除したシステムを作っている。

 

しかも会員には各メディア関係やマスコミ関係各社、そして地元企業が名を連ねており、大分県の4つのプロチームを、自治体と地元企業が一緒になって応援しているのだ。

 

 

■最もかわいそうな県職員が社長就任?

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大分にある4つのプロチームのうち、サッカーJ2の大分トリニータ。実は大分トリニータ(株式会社大分フットボールクラブ)の現・代表取締役社長は元県職員なのである。公務員がいきなり民間企業であるプロスポーツチームの社長?と思われるかもしれないが、これは退職派遣といって、公務員をいったん退職して民間企業(大分トリニータ)へ就職するのだが、大分トリニータの代表取締役の座を退いた後は、再び県職員に戻ることができるらしい。・・・、なんだかミラクルな技を使っている?と思われるのも無理はない。しかし、ここで「お役人はいいねぇ~。」と嫌味を言うのはまだ早いのだ。

 

 

2011年の代表取締役就任時には11億円もの債務超過に陥っていた大分トリニータ。かつてはヤマザキナビスコカップで優勝したチームにもかかわらず、スポンサー集めに苦慮し、当時はJリーグからの6億円の借入金が重苦しくのしかかっていた。財務面では息も絶え絶えのクラブの舵取りを引き受け、まさに「崖っぷちへの挑戦」(後にこのタイトルで社長自らの講演会が開催されている)、県職員でいる方がずっと楽だったのかもしれない。

 

 

■3年で財務面をV字回復に導く

だが、ついひと月ほど前(2014年4月29日)のニュースで、第三者割当増資により債務超過が解消されるということが明らかになった。さらに、2013年度決算では2億円超の黒字も実現してみせ、これでJリーグクラブライセンスの取得が可能となった。代表取締役に就任して3年で財務面の問題を解消し、あとはチーム強化に傾注し、J1に昇格するのが目下の課題となっている。

 

 

■6億円の返済金のうち、1億円は大分県民からの支援金

大分トリニータがJリーグからの6億円もの借入金を完済するに至ったのは、どのような経緯があったのだろうか。2010年と2011年の2年間で3億円を返済していたが、J1昇格へのプレーオフ参加のためには、どうしても残る3億円を2012年の一年で返済しなければならない。非常にハードルが高かったはずである。

 

だが、大分県民へ「J1昇格支援金」を打ち出し、一口5,000円の支援金を呼びかけた結果、1億円以上のお金がわずか3ケ月の間に集まり、それに呼応するように、行政と経済界から1億円ずつ集まり、結果としてJリーグからの借入金は完済された。

 

 

■おおいたホームタウン推進協議会の役割

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2009年7月、行政、企業(経済界)、そして県民が一体となった「おおいたホームタウン推進協議会」が立ち上がり、大分県内の4つのプロチームをバックアップする体制が整ったのは、大分トリニータが財務面で最も厳しい時期に直面していた当時と重なる。おおいたホームタウン推進協議会とは、生まれるべくして生まれた組織なのではないだろうか。

 

市がどうの、県がこうの、という小さい話をしていたのでは、大分トリニータが経験したような危機を乗り越えることは難しかったように思う。選手もファンも県民も頑張り、市も県も社長も頑張った結果ではないか。

 

 

■なくても困らないが、「なくてはならないチーム」に成長していた

極論を持ち出せば、スポーツは別段この世に存在しなくても良いのかもしれない。だが、やはり必要不可欠なものなのだと、ことあるごとに実感させられている。

 

大分トリニータというチームは、当時の財務面から考えると、倒産・消滅していても不思議ではない。でもそうはならなかった。県民一人ひとりが「大分県にはトリニータが必要」と感じたからこその現在ではないか。

 

スポーツの付加価値とは何なのか?目に見える形があるわけではないので、それについて明確に語ることはできないが、強いて言えば人の心とでも言うべきか。

 

間違いなく大分トリニータは大分県民にはなくてはならないチームなのである。